この度、MSXユーザーのMstz80axさんに伺いました。Víctor Martínezさんのパッチを利用して「Zanac-Ex」のBGMをMSX-Music対応に作り直して、この名作を更に改良した方です。それから、FM音源とPSG音源の同時使用でADX形式のデータをMSXで再生可能なXPLAプレイヤーの作成などに携われた方です。

MOAI-TECH: 必須の質問から始まります。いつからMSXユーザーになりましたか?MSXは何台、どんなモデルのコンピューターをお持ちですか?当時の他のコンピューターのユーザーでもありますか?

Mstz80ax: 私が高校時代の頃ですね。
友人がMSXの「GURADIUS2」海外版では「NEMESIS2」のサウンドトラックの入ったテープを、学校の教室にある、「MZ-80」コンピューターのデータレコーダーで再生してみせました。PSG音源のイメージから離れ、重厚な音が出ていました。

その後、私の友人が壊れたMSX1マシンを持ってきて、修理をしたのが始まりです。
MSXに「GURADIUS2」海外版では「NEMESIS2」のカートリッジをスロットに挿してゲームを遊んでいる時に、MSXを誤って足で踏みつけてしまって壊れたらしいのです。
MSXを床に置いて使っていたからでしょうね。
MSX本体「CASIO MX-101」と、ROMカートリッジの基板が共に割れてしまいましたので修理をしました。

私は当時、電子工作も趣味でしたので、市販の工作キット等を購入して、
手作りオーディオ機器を作っていたり、ゲーム機のコントローラーを改造して、連射装置も付けたりと色々、工作をやっていました。

割れたROMカートリッジの基板の回路を解析して、ユニバーサル基板を用いて直しました。細かい配線で手間がかかります。

部品も割れなかったのが幸いでしたね。
本体の基板も修理して、MSX-BASICを使ってみました。
他の機種は、買えるほどにお金持ちではなかったので、MSXのみです。
所持している機種は「SANYO MSX2+ PHC-70FD. WAVY」 です。

マシンは現在も動作しております。
内臓の2DDディスクドライブが故障しているので、
外付けのSONYの「HBD-F1」・2DDディスクドライブを使っています。
内蔵のディスクドライブも使えた時はもっと便利だったんですけどね。

その他にはMSX1、CASIOの「MX-101」
SONYのMSX2、「HITBIT」
この2機種は友人からもらったものです。

他のマシンではゲーム機の、「Family Computer」
(Nintendo Entertainment System)と、
「PC Engine」(Turbo Grafx 16)を持っていました。

作曲以外に、ゲームを楽しめますか?どんなゲームがお好きですか?

今では、アプリケーション等のプログラミングが中心の作業となりました。
ゲームを集中して楽しむ事は過去に比べあまり無くなりました。

しかし、自分で作成、デザインしたゲーム・プログラムの調整となると、
とにかく何度も試行して、バランスを調整したり、バグを取ったりと、
ゲームを作るというのも手間の要る作業だと思います。

過去にゲームはたくさん遊びました。
友達からゲームソフトを貸し借りしたり等というのが、あたりまえな時代でした。

ゲームで特別に好きなジャンルはありませんが、申し上げるとすれば単純明快に楽しめるシューティング・ゲームですね。

作曲はいつから興味になりましたか?どう学びましたか?

学生の頃は、音楽の課目というものはあまり好きではなかったですね。
興味のない曲を聴かされたり、歌わされたり、そういうのは好きではなかったです。

興味を持ったのは、やはり「ゲームの音楽」ですね。
ゲーム機から出てくる音楽がどうやって演奏されているのかが疑問に思っていました。
「ゲーム機の内部に鍵盤でも入っているのかな?」-という事を思っていました。
後にMSXと出会い、自分で音が出せる事がわかりました。
本格的にゲームも作れるかも知れないと思い、MSX関連のプログラムの本を書店で見つけたりしました。

BASICのMMLで曲データを入力するのが、まず基本で始めですね。
その後、もっと高度な事ができるマシン語を使った音源の操作法が必要になります。
マシン語を使ってPSG音源を操作、音を出してみる実験をしてみました。
カラーテレビも故障してしまい、白黒テレビのRF入力で画面を見ていたので、絵を描く事もできませんでした。
出来る事はプログラムをマシンに入力する事のみです。
後にビデオ入力付きのカラーテレビを購入しました。
ビデオ入力はなかなかの画質ですが、色の滲みがあるため、くっきりな映像ではなかったですよね。

ゲーム音楽だけではなく、父の持っていた古いレコードとか、アニメソング等、ジャンルを問わず、洋楽、邦楽、何でも聴いていました。

1995年頃に、「Power Mac Performa6210」とMIDI音源「SC-88VL」を購入しました。
MIDI音源からリアルな楽器の音が出せるようになり、
改めて様々な楽器の音色の種類、実際の楽器の奏法に似たような技を使わないといけない事もわかりました。

「SC-88VL」は今でも実作業で使っています。
「SC-88PRO」も欲しかったですね。^^
その他、キーボードはCASIOの「CTK-530」を使っています。

ゲーム音楽の聴き取りをして、MIDIデータの作成をしてました。
音の聴き取りは「テープ」や「MD」からです。
まだ音楽的な感覚、奏法がわかっていなかったので、
音を聴き取りをしてデータを作製しただけに過ぎない程度でした。

ちなみに、私は楽器の鍵盤は上手に扱えません。(衝撃的事実!)^^
データの打ち込みというのが中心です。

「Zanac-Ex」のサントラのリメイクを作ろうとしたきっかけは何でしたか?

2018年春、年の初めに「MSX Resource Center」さんから、
「PSG対応のゲームソフトの音をOPLL対応でアレンジしてみたい」という事で、私に依頼が来たのがきっかけです。
OPLL対応に再配置するゲームソフトについて、しばらく意見を交換した後に、私は「ZANAC」が思い浮かびました。

最初は「-EX」ではなく、MSX1の「ZANAC」の曲のデータのみでした。

この「ZANAC」の元のデータはMIDIデータ。
自分で聴き取りしたデータと、過去に他の所から様々にダウンロードしたデータなどです。
ダウンロードしたデータも大体にどこか間違っている場合があるので、
自分の耳で聴き取って改めて調整したりする必要もあります。

MSX2の「-EX」に決めた時、追加分の曲データを改めて聴き取りして、
過去データの間違いの部分も修正しました。

最初は、「OPLLで演奏させると、演奏処理の重さの関係で無理かな?」と思っていたのです。
やはり処理が重くなると、走査線の割り込みの遅延で画面が崩れてしまうという事が起こりました。
そして、Víctor Martínezさんはやってくれました。凄い技術です。

ゲームソフトの内容を解析して、改めてまとめ直す作業が必要なのかと思います。
ちなみに、「ZANAC」の原作者さんとはお話をした事がありません。
「どうも勝手に作ってしまいまして、すみません・・・。」

私にも何も利益も無い事なのですが、「夢を形に」という思い。
Víctor Martínezさんの労力は、私もよくわかります。
どうもありがとうございます。

同様にBGMのリメイクを作ってみたいと思われるタイトルはどれでしょうか?

なんでも良いですけど、
特にロールプレイングゲーム等が良いのではと思います。
「ドラゴン・クエスト」とか「ファイナル・ファンタジー」とかですね。

FC,NESの音源よりも、また違った感じで聴いてみたいというのはあるかと思います。
MSXはアクションゲームやシューティングゲームなどの処理能力が必要なジャンルは難しいかも知れないけど、
ロールプレイングゲーム等の方が表現できるかも知れません。

MSX用のプレイヤーは既に多くあります。それでは、何で新しいプレイヤーを作ろうと思われましたか?

自分的に扱い良い環境が欲しかったからです。
自分で作成したプログラムの方が、必要な機能の追加等が容易です。
自分の作成するゲームに載せた場合、演出でも凝ったものにできる等、細かな機能などもあります。

XPLAとは確かに優れたプレイヤーで、新しい機能がたくさん組み込まれています。どうしてADX方式?

「AD」は「AUDIO」、「X」はMSXの「X」です。^^
最初、データファイルの拡張子の名前をどうするか考えたのですが、
結構単純に。
「XPLA」も名前をどうしようか考えたのですが、
MSXの「X」、「PLAYER」の「PLA」と書いたものです。
ちなみにエディターは「XEDT」という名前です。

MSX Turbo Rのユーザーが非常に喜ばれる、PCM対応も含む新バージョンが開発中だと聞いておりました。SCC、MSX-AudioまたはヤマハのOPL4の使用も検討されましたか?

PCMの対応は、ADXファイルのデータ設計当時から、検討していました。
データの中に画像データ等を読むために、ファイルネームを記載する事が出来るようになっています。
ここにPCMのデータファイルの名前を書くことにより、PCMのデータを読み込むようにしました。

今は更に機能を追加して、ステレオ化すること等の実験をしています。
音の方に力を入れてゆくと、音源ドライバ自体の大きさが大きくなり、問題も出てきます。
音源ドライバと音のデータ以外にも、ゲームシステム他、プログラムやデータが必要です。処理が重くなる、容量の制限などですね。

他にはMSX-Audio、OPL4がありますが、対応させようとすると、
様々な部分で更にプログラムが大きくなったり、データ形式が異なるので、
もしも対応させるのだとしたら、また別のプログラムになるのだと思います。

XPLA用の新曲、またはMSXの商用時代のゲームのサントラのリメイクを楽しみにしております。お時間をいただきまして誠にありがとうございます。

どうもありがとうございました。